shop [ nimbus ]

nimbus

福井県勝山市にあるnimbusのリアルショップは、建築家:磯崎新氏が設計した個人住宅を改修したコンクリート建築。線と球を抱えた白灰色の店内には、刻一刻と表情を変えながら光が射し込み、コンクリートの内側ながらに〈自然〉を感じさせます。

店名の「nimbus」(ニンバス)は雪雲の意。
”雪雲と雪におおわれた無彩な世界を色や柄であふれさせたい”
という[CorDIal/12]のブランドの原点に由来します
ここに初めて招かれたとき、”この雪雲色の空間に色を溢れさせたらさぞかし楽しかろう”と考えてしまい、それまで誰ひとり想像だにしていなかったリアルショップnimbusが誕生したのでした。

築37年になるこの建築を改修するのに留意したことは”物理は変えずに印象は変える”ということ。一見、スタイリッシュなだけに見えるこの建築ですが、実際使ってみると、風が気持ち良く通り抜け、太陽の光、雲の流れや天体の動きをそのときどきで感じることができ、さして広くないのに開放感がある……この場所にあるからこその設計だということを感じさせられます。その純度の高いオリジナリティを損いたくなく、なるべくエッセンスは残して、住宅→ショップへと印象を変えられるように時間をかけて”Tuning”していきました。

改修に携わってくれた建築士の方と何度も話し合いを重ね、結局、建具などもほぼ当初のまま残しています。磯崎建築の持つ強い形式性に、やわらかい可変性を重ね、今はそのときどきで、ちょうどよいポイントを探りながらお付き合いしているところです。
強固なコンクリート建築でありながら、しなやかに変化していくその様は、まるで移り変わる雲のようでもあり、「名は体を表す」を現在進行形で感じています。

場所は、勝山市役所の隣。わかりやすい立地にも関わらず、目立つことを好まなかった前オーナーの意向を見事に反映させ、景色に溶け込んでおりますが、ちょっと見上げると目に入る”半眼の窓”が目印です。
黒川紀章氏が設計した「福井県立恐竜博物館」から車で15分ほど。スカーフブランド[CorDial/12]をはじめ、国内外のセレクトアイテム+小さいカフェがお楽しみいただけます。
福井にお越しの際はぜひお立ち寄りください。

〒911-0804 福井県勝山市元町1-1-3
※定休日、営業時間はインスタグラムでご確認ください

プロジェクトメンバー 

2019年にこの建築を取得して以来、たくさんの方のお力添えをいただき、2022年9月にようやく、nimbusとしてオープンすることができました。
なにぶん特殊な建築ゆえ、修繕の優先順位と、改修する軸みたいなものがなかなか掴めなくて、どうにも進まない時期もありましたが、プロジェクトメンバーの皆さんが根気強く付き合ってくださったおかげで、ようやくここまで来れたと感謝しております。
主に関わってくださった4名の方に当建築の改修について、お話を伺いました。

清水 俊貴福井工業大学准教授

 始まりは磯崎建築の原単位空間(モジュール)との出会いだった。2021年夏の内覧会、予約した指定時間の1時間前に到着。時間を潰そうとメジャーを取り出す。コンクリート打放しのセパ穴やパネルの割付を実測 し平断面の寸法を割り出してみたところ、日本の建物で一般的な1820*910㎜寸法よりちょっと大きめの2100*1050㎜を基準に平面断面の寸法が決められていた。
指定時間に屋内に伺うと、整然とした打放しコンクリートの躯体の中に、様々で豊かな表情を感じ取る仕上げや仕掛けが組み込まれていた。

…天井のドームや、白い大理石のモノリス、不思議な表情の開口部等々…それは逆に、コンクリートの躯体の強さを際立たせているようにもみえた。


 手元に30年前に開催された「1960/1990磯崎新展」のカタログがある。その中で建築家富永讓は磯崎新の原単位空間について触れている。日本人にとり、馴染み深いスケールの1.1〜1.2倍のスケールを用いることで、身体的な感覚とずれた、自立した幾何学形式が優位に立つこと、そこに磯崎建築の魅力を捉えている。(ちなみに1050は910の1.154倍だ)
「…設計は幾何学的空間と先ず関わりながら、身近な感受性がそののち導入され、それによって変形されたようにみえる…」(引用:1960/1990磯崎新展 展覧会カタログ 富永「闇と青空」より)
身体性に先立つ、幾何学性の優位。強い幾何学の構成、躯体の強さの下で、何をするべきか。 何にしないでおくべきか。 「ニンバス チューニング」はその見極めの作業でもあった。  Instagram

山田 寛­一級建築士事務所 LoHA

 「nimbus」の改修にあたり大切にしたことが、建築を「リノベーション」するのではなく、チューニングを合わせるように設計をすることである。そもそも建築は時代に合わせて最適なチューニングをなされて設計されていると言える。しかし、時代を重ね、所有者が変わり、用途が変わると、当然のことながら当時の最適なチューニングからズレが生じる。そのズレをそのまま生かすのか、改修するのかという作業を一つ一つ選択し、チューニングし直したのがこのnimbusである。

 一見すると何も変わっていないとも言えるし、ガラリと変わったとも言える。この「変わっているようで変わっていない」という感覚こそが、チューニングという行為の醍醐味である。そもそもチューニングという行為は、些細な変化をもキャッチする行為が求められる。よってチューニングするということは、物事に敏感で、些細なことを観察するということである。チューニングという手法は、コンセプトありきの建築手法とも違うし、今までの「リノベーション」という手法とも異なる。チューニングは、その都度コンセプトが流動的に変化し続け、それにより付加価値も変化し、その変化に機敏に反応し、カスタムしていくことである。 

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二口 祐輔UNiR FURNiTURE

■impression
外観: 個人的にコンクリート造は少し重く気取って見える印象がある中で、この建物は正面にアーチ型を含んだサッシがあるからか、どことなく茶目っ気があるように見えた。 建物横からテラスへとつながるアプローチに、共に歳を重ねてきたであろうジャスミンの蔦壁があり、 門扉から覗けるそれらは、晴れの日は涼しげに、雨の日には少し艶っぽく見えたりもして、重い印象の建物を緩和していた。
内観:うす暗い玄関からホールへ抜けた時のドーム型天井が創り出す解放感に加え、 サッシから差し込む光でそう感じたのか、どことなく抱擁感もあり、外観とのギャップで初めて入館した時のインパクトはとても印象的だった。 なんとなくだが、どこか聖堂のような雰囲気もある気がした。
1F、2F の各部屋には、30 年以上前なのに今尚モダンに感じる造作や器具などが随所にあり、トータルデザインの深さを感じた。

■approach
 建物、空間の印象、取り扱う商品(スカーフ)から、メインは建物と商品で基本的に新規什器はインパクトをあまりもたせないシンプルなデザイン・シンプルなカラーが一番良いと思いました (最初はなるべくすべての要望に応える事に重点を置いた提案をしてしまったが) 。建築士の二人がプロジェクトリーダーとして指揮をとり、プロジェクトの方向性を整えていってくれる中で、 自分は店舗デザインやウェブデザイン、セレクトショップのオーナーなどの知人にも意見を求めながら提案を考える。

[レセプションカウンター]
今回の依頼を頂くきっかけとなった「ツカノマ」(石川県白山市)さんのカウンターをベースに提案。

[ホール什器]
当初はドナルド・ジャッドのデザインをベースにした箱型を提案するも、 最終的に取り扱う商品が変化していく事に対応できる柔軟性を考えた上で、気づけばエンツォ・マーリのデザインに近づいた箱を提案 (至ってシンプルな箱だが、箱の向き、重ね方、またガラス天板でショーケースのようにもなり、その時の商品、シーンに合わせながらレイアウトできる什器になったかと思います) 。
飲食のテーブル天板や既存カウンターのサランネット扉は建築士のアドバイスを取り入れさせてもらいました。 内装工事が完了した最後の局面で、勝手に全体の色のバランスが気になってしまい、かなり悩んでしまいました(まだ考えてしまうくらい) ただこれはどんなお店でも商品で色付けされてみないと最適解は出ないと思い、今後どんな色を足して、または引いていくのかが楽しみです。 ■Instagram

水上 達也水上建設株式会社

Q:この建築の一番好きな場所は?

A:すごいと思うのはもちろんドーム状の天井兼屋根ですが、好きなのはリビング側から見た玄関方向の光が差し込んだ雰囲気です。

Q:改修工事で一番大変だったところを教えてください

A:RCの打ち放し仕上げは補修が困難で、設備配管の調査の際に漏水したであろうやり直した配管が無数にあり、不明な点が多く、実際の施工の際にはさらに追加工事が発生する恐れがありました。また意匠重視の重鎮の設計ではメンテナンスについての考慮は無いに等しく、改修の際も意匠が重視されるため、施工方法が限られるところが大変でした。

Q:改修前、改修後で一番変わったところはどこですか?

A:外観です。自分で言うのもなんですが、とてもきれいになりました。青空に映えるとても素敵な外観です。
今まで、RCの改修では学校や公民館などの公共施設を担当させていただきましたが、今回はボリュームも丁度良く、ある程度いろいろ気を配らせて施工管理が出来たのではと思っています。

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